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日が落ち始めていたが、また連れ立って外に出た。今度のジャコは真っ赤なポストに関心を示したので「あそこに手紙を入れると届けたい人に届けてくれる」と説明した。
「どうやってうちまでつながってるんだ? あの下に誰かいるのか?」
突飛な発想に大笑いしているうちに、チェーンのリサイクルショップに到着した。ひとしきり店内を物色してから、もう何十回もやったことのあるゲームソフトと、初心者向けのレシピブックを何冊か購入した。
家に帰ると、さっそくゲーム機を起動させる。
「あーそっか。名前つけなきゃなんねえのか」
「名前? だれの?」
まだ序盤も序盤なのに、正座したジャコはもう前のめりになっている。
「ゲームの主人公だよ。名前が好きに決められるの。『ジャコ』でいっかな」
「やだ。『リッカ』にしてよ」
「こっぱずかしいからやだよ」
オレは画面上でカーソルをくるりと動かした。レトロな画面がぴかぴか点滅する。
「だってコイツ、父親に憧れて勇者を目指す、っていうキャラ設定なんだぜ。やってられっか」
「リッカは父親が嫌いなのか?」
「もちろん」
即答しながら、何かが引っかかった。
「リッカが父親を嫌いなら、おれには父親がいないよ」
ジャコの台詞に、あ、そういうことか、と気がついたが、ジャコの口調はからっとしていたので気にしないことにした。
「ま、それもそうだな。しょうがねえからオレの名前でいくか。ジャコは仲間の名前にでもしようかな」
リッカと名付けられた勇者は、勝ち誇った顔をしながら、画面の中でくるっと一回転した。
「仲間って?」
「仲間ってのは……そうだね。同じ目標に向かって助け合う奴ら、のことかな。友達みたいなもんさ」
「ふうん」
「あーでも、仲間って三人いるんだよなあ。一人がジャコだと他の二人が困るなあ……」
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