Ⅱ リッカ

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 オレとジャコは毎日ゲームで遊んだ。ストーリーもセリフ回しも暗記するほどやりこんだソフトだが、隣にジャコがいるだけで、新たな気持ちで楽しめる。 「リッカ、あの家入ってない」 「了解、いま行くわ」 「あと、端っこの子供に話しかけてない」 「じゃあそっちからだ」  オーソドックスなシリーズ物のロールプレイングゲームである。やり方を説明した後はジャコに一人でやらせるつもりだったのだが「リッカがやるのを見てたい」と言うので、結局並んであぐらをかいていた。 「リッカ、敵いたよ」 「あいつはクソ強いから後回しだ」 「いいじゃん、戦おうよ」 「負けるぞ。ま、いいけどな」  ストーリーどころか、大体の敵のステータスも完璧に覚えている。 「……あれ」 「倒せそうだよ」 「おかしいな、勝てるかも」  首をひねった。今のレベルで挑んでも絶対太刀打ちできない敵なのに。  攻撃。防御。コマンドを繰り出す。相手の体力ゲージがどんどん少なくなっていく。 「勝っちゃったな」 「だろ」  得意そうにジャコが笑う。オレは不思議な思いで画面を見つめていた。
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