Ⅱ リッカ

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 ドロドロの状態で家に帰りつく。どこかの家からカレーのいい香りが漂ってくるものだから、自分の生き様との違いに、余計にみじめさが増した。 「ただいま」  ところが、がらがらと引き戸を開けると、その刺激的なにおいは濃くなった。米の炊ける甘くて香ばしい気配も感じられる。 「ジャコ?」 「あ、リッカ、おかえり」  ビーサンを脱ぎ台所を覗きこんで驚いた。鍋の中で琥珀色の液体が、ことことと煮込まれているのだ。 「お前、カレーなんて作れたのか?」 「うん、カレーなら初めてでも失敗しない、って書いてあったから」  昼飯を買う余裕すらなくぼろ雑巾のように使い果たされた身体が、たちまち生気を取り戻す。シャワーで頭から足の先まで綺麗さっぱり洗い流して、オレは食卓についた。 「いただきます」 「いただきます」 「ん?」 「あれ?」  しかし、一口食べたオレとジャコは、同じタイミングで顔を見合わせた。 「……ちょっと、苦いか?」 「それにザバザバする……水っぽい。カレーってこういう食べ物?」 「いや、普通はもうちょいこっくりしてて……」  ジャコの目が曇る。オレは慌ててフォローした。 「でも悪くないよ。だいたい、初めてだろ。初めてでこんだけ正解近く作れたなら十分だ。苦いのはもしかして、焦がしたりしたか?」 「そう。水量るやつがないかなと思ってさがしてたら、野菜がこげちゃってた。量るやつもなかったから、水の量もわかんないし」 「あーたしかにそんな調理器具がうちにあるわけねえわ。なるほど、それで水も多すぎたんだな。よし」
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