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オレはうなだれるジャコの頭をなでた。いつ触っても、産毛のように柔らかくてふわふわだ。
「明日、計量カップ買いに行こう。そしたらまた作れよ。いいか、失敗は、そこで止めるから失敗になる。成功するまで再チャレンジすれば、それは成功の一部分だ。ただの成功だ」
「うん」
オレの屁理屈に、ジャコの顔がようやく明るくなった。
「ま、これはこれで悪くもないしな。せっかくだから楽しんで食べようぜ」
食事というのは美味いにこしたことはないが、何を食べるか以上に「誰と食べるか」ということが満足感を大きく左右する。
父親も、母親もろくに家にいなかったオレにとって、たった二人でも好きな人間と一緒に囲む食卓は、祖母と暮らした日々以来のものだった。
ジャコが言った。
「でもくやしいなあ。もうちょっと何とかならないかな、これ」
「何かしらリカバリーの方法はありそうだけどな」
「うーん、リッカ、パソコン借りていい? あれ、わかんないこと調べられるんだろ?」
「お、いいよ。後で使い方教えてやるよ」
「やった!」
ジャコの表情がくるくる変わる。それを見ながらオレは、こいつを拾って連れてきて良かったな、と心の底から思った。
心細そうな迷子の目の、何倍も、何十倍も魅力的だ。オレは頭をぐりぐりと乱暴になで、ジャコはくすぐったそうに、ふふと笑った。
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