Ⅱ リッカ

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 そうだ、厄島だけではなかった。ジャコのことを思い出すと、胸が痛んだ。  不幸な道に引きずり込んで悪かった。  オレは幸せだったが、お前にとってはほかの奴に拾われたほうが、ずっと良かっただろう。  でもあいつはいい奴だから、今日もカレーを作って待っていてくれたかもしれない。それが食べられなくて悔しい。  最後にお前の顔だけ見ておきたかった。でももう行かなきゃならない。  ……覚悟を決めたオレはついに顔を上げ、人ごみの流れに身を投じ、改札へと吸い込まれていった。
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