第7章

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「この勇ましい獣をすぐにでも味わいたい所だが、今は私の方が自分を抑えきれそうにない」  衣擦れの音がし、寝台の上に衣が落ちる。白い素肌に金色の髪が掛かり、反り勃つアウジードの雄の象徴が眼下に晒される。美しさと雄々しさを兼ね備えた姿に、ラズはゴクリと息を呑んだ。だが、同時に現れた痛ましい姿に、胸が痛いほどに締め付けられてしまった。 「……どうかしたか?」  ラズの肩に置いた手から伝わる違和感に、アウジードは添えていた手の力を弱めた。 「…………」  つい先程まで身体の火照りを表情にまで出していたラズが、一変して暗い面持ちで視線を落としていた。しかも、身体まで小さく震わせていた。  ラズは言葉には出来ないほどの罪悪感に襲われ、心が崩れてしまいそうになっていた。  アウジードが日常に戻ってからも、ラズはなるべく彼の身体に負担を掛けまいと、行為を避けていた。それに加え、そういった気分に自分がならないようにアウジードへの接触を自制したり、着替えなどで裸体を見てしまわないように心掛けたりと、色々と注意していた。  その行動は、労りの想いから現れたものだとラズは思っていた。だが、実際は全く異なった意識からもたらされた行動だった事に、今になって気づかされた。  これまでラズは、何度も体調を気遣う言葉をアウジードに掛けていた。しかし、それだけで、痛む身体を擦ったり、軟膏を塗るなどのアウジード自身が行う治療を介添えするなど、行動を伴った労りを向ける事が殆どなかった。  それは、ラズの心の弱さがもたらした行動だった。アウジードの痛みに触れてしまえば、確実にその原因を思い出してしまう。そうなれば、自分の犯した罪を強く実感してしまう。ラズはそれを恐れ、罪の意識から逃れるように、無意識に痛みから意識を逸らしていたのだった。
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