第7章

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「ラズ、このくらいで惚けてどうする」 「……っ、し、仕方……ないだろ。…………っあぁ」  恥ずかしさから両腕で顔を覆い隠すが、つい意固地な部分も出てしまう。しかし、アウジードが僅かに動いた反動が、《雷》の魔法にでも撃たれたような痺れとなり全身に伝わり、辛うじて繋ぎ止めていたラズの牙城は呆気なく崩落してしまった。  ラズの口からこぼれた小さな悲鳴を切っ掛けに、アウジードはゆるりと腰を動かし始めた。  二人の熱を溶け合わすようにゆっくりだった律動は、しだいに互いの快楽を貪るような動きに変わっていく。激しさを増す動きに、ラズはすっかり翻弄されいた。人間の雌のように上擦った切ない声、涙まじりの上気した表情、もたらされる快楽に悶える身体。その姿からは魔獣の獰猛さは微塵も感じられず、ラズが人間を脅かす魔獣とは到底思えない姿だった。 「……あぁ……んんっ。……い、いゃ、アウジード……」 「……嫌、ではないだろう」  本当の意味で想いを通じ合わせ、二人の心の距離がいっそう近づいたからか、朱毒の毒にうなされた時以上……、いや、初めて美しい双眼を見上げながら過ごした夜以上に感じてしまう。抑制の利かなくなっていく自分を恐れ、ラズは浅く荒い呼吸の合間にそれを訴える。だが、そんな戸惑いを覗かせた乱れ方が、アウジードの琴線に触れてしまったのだろう。ゆるりと口角を上げると大きく腰を引き、快感をさらに引き出さんばかりに勢いよく腰を打ち付けてきた。 「――――はぅっ!」  存在をより大きくしていた猛りは、柔らかな壁を擦りあげ、一気に最奥まで届いた。その衝撃は一瞬で全身を巡り、ラズは身体を仰け反らせ意識を飛ばしそうになってしまった。  どうにかすんでのところで意識を繋ぎ止める事はできたが、朦朧とした思考の奥に今の自分が自分でない感覚が広がり、さらに自分への恐怖が増してしまった。
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