第1章

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 見渡す限り一面に広がる琥珀色の大地。乾いた風と共に砂塵が舞う。  砂の大地を駆ける一匹の獣。白銀の毛を靡かせ、四肢が力強く大地を蹴る。  ある目的を持つ白銀の狼は、代わり映えしない乾いた大地を砂を巻き上げひたすら走っていた。だが、その足はおもむろに地を蹴ることを止めた。休みなく長時間走っていたのか、ハッ、ハッと短い呼吸が牙を覗かせる口から吐き出されている。  そこには草も木もない。もちろん、喉を潤すための水辺もない。そんな砂漠のど真ん中で足を止めた狼は天を仰ぎ、鼻をヒクヒクと小刻みに震わした。乾いた砂の匂いしかない風の中にに微かな別の匂いを嗅ぎとると、耳を跳ねらせ、鋭い眼光で遠くを見つめた。琥珀色の双眼が見つめるのは、遠くに見える街の姿。 『――ラズ。認められたくば、それに値する成果を示せ』  白銀の狼――ラズは、長の言葉を思い出し吼える。 (俺は……、俺は必ず認められてみせる)  自身を奮い立たせる遠吠えが砂と共に舞い、広く響き渡った。
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