第1章

2/6
前へ
/6ページ
次へ
「ひょっとしてまたやっちゃったんじゃないだろうねえ」  下校時、迎えに来たガードイエローにたずねられた。  ぼくは首をかしげる。  ガードイエローはグローブに包まれた拳をぎゅっぎゅとせわしなく握り込む。「か弱い人間であるところのキミがだね、物腰やわらかく接してくれてるスーパーヒーローに対してだね、いきなりそのぉ何というか、奇襲を仕掛けるというか――」 「おーい!」ガードイエローのお小言めいた詮索をさえぎったこの声の主はウィッグマンだ。「いやあ、凄かったなあヒデオくん!」 「キミこそボクらのヒーローだよ」ファットマンも一緒だ。 「ちょっ、ちょっ、ちょっと待て!」ガードイエローが立ちはだかる。「彼の警護はこの守衛戦隊ガードマンんとこのガードイエローが請け負ってるんだよ。外回りの最中にワタシを飛び越えて気やすく話しかけるんじゃないよ!」 「あ、ごめん」ウィッグマンが頭を押さえながら会釈する。「ただ、ヒデオくんとはボクたち同級生だからさあ」 「この子と同級生っておまえ、そんな――」ウィッグマンと対峙したガードイエローはその頭部に視線を注ぎながら何かを言いかけたが、なんとか途中で飲み込んだ。正義の判断だ。 「ところで今、聞き捨てならんことを言ったな」ガードイエローがあらためてふたりに詰め寄る。「“キミこそボクらのヒーロー”だあ?」  ウィッグマンとファットマンは直立不動で聞いている。 「貴様ら、恥ずかしくないのか。いやしくもスーパーヒーローともあろう者がいたいけな少年にヒーローの激務を押しつけようとするなんて!」 「いえ、べつにそーゆーことじゃ……」 「じゃ、どーゆーことだ!」ガードイエローは学校を指さす。「こたえろ。あそこでいったい何があった!」 「そのことに関しては……、ねえ」ウィッグマンがとなりに目を流す。 「何だよ!」 「一応、外部にもらしちゃいけないってことになってますから」ファットマンがほほ笑む。 「外部とは何だよ、外部とは! ワタシは外部か?」ガードイエローが肩をそびやかす。「外部ってのは軟弱な人間どものことを言うんじゃないのか? 連中にバレたら都合悪いことがあるから内緒にしてるんだろ? ンーなこと知らないとでも思ってんのかよ。ナメてんじゃないぞ、このふかしヒーローが!」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加