第1章

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「ずいぶんな言われようだねぇこりゃ」ウィッグマンが黒髪の下に指を入れて地肌をかく。 「そんだけ知ってんだったら聞くこたないのに」ファットマンが腫れた顔をゆがめる。 「なんだ貴様ら!」ガードイエローが派手にかまえる。「スーパーヒーローに対する侮辱は悪とみなすぞ!」  ガチャリ、と音をたててガードベルトからガードソードが地面に落ちる。  すぐさまファットマンが拾い上げ、汚れをはたき、傷がないかを確認してからガードイエローに返す。 「ありがとう」ガードイエローはかまえをとくと、気まずそうに武器を受けとる。「……で、この子になんか用か?」 「いや、放課後に裏山でヒーローカードの交換会をやろうって約束してたもんですから」ファットマンがこたえる。  ガードイエローは一瞬、固まった。それから半歩さがってあごを引く。 「おまえら珍しいやつらだな」目のまえのふたりをじっとりとながめる。「人間の子供とそんなことする?」 「いやあ、そんなこと言われても、こればっかりは趣味の世界だからねえ」 「とやかく言われたくないですよねえ」  ガードイエローがぼくを見おろす。「こいつらの言ってることは本当なのかい?」  ぼくは黙ってうなずく。 「で、今からその、交換会とやらに行くつもりなのかい?」  つむじをふりかぶって大きくうなずく。  ガードイエローはぱらんぱらんと指先で太ももを数回たたいてから突如ポーズを決めると、 「オレも、同伴だ!」と力強く言い放った。  こうしてぼくらはガードイエローを連れ立って、学校の裏山にある秘密のアジトへと向かった。  奈落にふるえながら崖をよじのぼり、雪化粧をほどこした岩肌が厚化粧の雪景色になったころには猛烈なブリザードに襲われ、何度か雪崩に遭いながらもようやくアジトの入口に到着すると、 「ちょっと待て!」とガードイエローが素っ頓狂な声をあげた。 「ここまで来て“待て”はないだろう」カチンカチンに凍った乾物状のものを頭にのせたウィッグマンが顔をしかめる。 「今さらどっかに引き返すんですか?」雪山でも汗じみだらけのファットマンも表情を曇らす。 「いや、そうじゃなくて」ガードイエローは膝に手をつき、あえぎにあえぐ。「キミら、裏山って、こんな……、こんなとこ!?」
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