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「秘密基地っていうぐらいなんだから」ウィッグマンがリモコンのスイッチを押すと岩壁が左右にわかれ、門が開く。「多少わかりにくいとこにあるってことぐらい、推して知るべしでしょうが」
ガードイエローはか細い声でぼやく。「こんなことならうちのマシンを出動させたのに……」
容赦なくリモコンのスイッチを押すウィッグマン。
岩壁を模した門が閉まりはじめる。
ガードイエローはつんのめりながら狭まる岩の隙間に滑り込む。
一段一段、高さがまちまちな階段をくだってからエレベーターに乗り込み、さらに下へとくだって行く。
扉が開くと、青白い光を帯びただだっ広い部屋が現れる。中央には長机だけがポツンと横たわる。
ガードイエロー以外が着席すると、各々手持ちのヒーローカードを机に広げる。
「ここんとこカスがずいぶん貯まっちゃってさ。10枚ばかし引き受けてくれないかなあ」ウィッグマンが切り出す。
「それなりに色をつけてくれないと、ねえ」ファットマンが腫れぼったい笑みを浮かべる。「例のやつでしょ? ボクもあまってんですから」
「じゃ、ティーチウーマンの第1シーズンつけるから。キラキラ加工されてるやつ」
「あと戦闘員つけてくださいよ、80年代ぐらいの。そしたら考えます」
「そっか、戦闘員コンプリート目指してんだもんなあ」ウィッグマンが解凍されはじめたカツラをかきむしる。「いや、でも悪のカードはレアだからなあ。じゃあ、ヒデオくんどう? カス10枚とそれから――」
「おい、ちょっと待てよ!」ガードイエローがトレーディングカードのならんだ机をたたく。「何さっさとはじめてんだよ!」
ぼくらは呼吸の合ったため息をもらした。
「何なんだいったい。さっきから待った待ったって」ウィッグマンが背もたれに身をあずけてガードイエローを見上げる。
「こっちははじめて来てんのに、ほったらかしかよ!」
「自分が勝手について来といて持てあましたら一方的にゴネるって――」ウィッグマンは腕組みをする。「ヤクザみたいな男だな」
「は?」
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