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「ほんとホント」ファットマンがカードのおさまったアルバムをめくりながらうなずく。
「おまえらのたとえはワタシにはさっぱりわからんよ」吐き捨てると、ガードイエローは部屋の隅々をながめながら歩きはじめた。「ンーなことより、こりゃいったい何なんだよ!」
ぼくらはカードをならべたり引っ込めたり、ニヤニヤ自慢し合ったりで忙しい。
「おい、無視すんなよ!」
ウィッグマンが露骨にカツラをずらして頭をかかえる。
「ここはいったい何なんだって聞いてんだよ!」
「だから秘密基地ですよお」ファットマンがこたえる。
「秘密基地ヒミツキチって、これじゃあまりにも……」ガードイエローは腰に手をあて、肩を落とす。「基地過ぎるだろ!」
ウィッグマンが眉間にシワを寄せる。「キチスギル?」
ぼくもファットマンも苦笑いして首をかしげる。
「……要はその、ガキがこしらえる秘密基地じゃないだろ、これじゃ」ガードイエローは部屋の隅にならぶ錆びたロッカーのひとつを強引に開ける。空っぽなのを確認するとガジャンッとたたきつけるように閉じる。遠くで積み木が崩れたような音がしたかと思うと、砂利を降らせながら部屋全体が揺れる。
身を硬くしたぼくらは肩をすくめて様子をうかがう。
「これこれ、ダメだよ」ウィッグマンがじんわりと身体をほぐしながら声をとがらせる。「ここは微妙なバランスで岩がささえ合ってできてるとこなんだから、急に強い衝撃を与えるのはなしだよ」
となりのロッカーに手をかけようとしていたイエローは「ごめんなさい」と小さくあやまってから再び吠える。
「おう、ところでなんだ、貴様らのその小さなプロマイドは!」
プロマイドですって、とファットマンが腫れたまぶたの奥をまるくしてにんまりとささやく。
「悪の戦闘員をコンプリートするだのなんだのって、ずいぶん不健全なことをやってるみたいだなあ」
「さっきも言っただろう」ウィッグマンが両手を広げて机の上のカードたちを示す。「趣味の世界の話だから」
「悪をコレクションするような趣味はすなわち悪趣味だってんだよお!」ガードイエローが指をさす。「“悪”という文字のつくすべてのものを殲滅するのがワタシたちスーパーヒーローの役目だろうが!」
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