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最終章 君が触れるものすべてに嫉妬する
僕は歌手だったからよかったのかもしれない。
僕がもし会社員だったら、 パンでは済まされない。
君が持つボールペンも、君が触れるパソコンも、君が話す電話の相手も。
全てに嫉妬する。
気持ちを伝えるのに、うまくいかない。
僕は歌手だから歌に乗せて気持ちを贈れる。
僕は嫉妬の塊だ。
君が触れるものすべてに嫉妬する。
嫉妬しても仕方ないのに。
だって。
君と僕は付き合っていないのだから。
僕の妄想の中で、嫉妬しているだけだから。
妄想だから君という存在も、無いに等しい。
僕の妄想の中で、 君という存在を作り出し勝手に妄想して歌を作るのだから。
パンに嫉妬したって、それはもう僕の妄想だから。
存在しない相手に嫉妬して、存在しない相手のことを考えて、 それでも僕は妄想世界の君のすべてに嫉妬する。
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