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僕の願いが通じたのか、ネーちゃんは銀色の可愛らしいフォークでもってケーキの端っこを少しだけ切り取った。
「頂きまぁす」
その小さな欠片を無駄に開けた大口でパクリ。
彼女はサルじゃなかった。多分、オオサンショウウオか何か。
「うーん、美味しーい。すっごく濃厚です」
そりゃまあ、その見た目でさっぱり柑橘系とか言われたら、そっちの方が食べてみたいわ。そう言えば、郁美はチョコレートケーキが好きだったなぁ。何とかこれでご機嫌とれないかしら。
……そんなんで済んだら、苦労しないって話だよな。
「チョコレートのこってりとした甘さと、ガナッシュの濃厚なコク、それにコーヒーのほろ苦さがいいアクセントになってます。何だろう、ちょっとセンチメンタルな感じ?」
お気楽なセンチメンタルもあったもんだ。
そもそもセンチメンタルの意味を知っているのだろうか。知っていたら、こんな軽はずみな使い方はしないはずだ。十六歳じゃあるまいし。
「この、人気洋菓子店、まるむし亭で一番の人気ケーキ、オペラ。私的にもスッゴクお勧めだなっ!!」
顔にくっつけるようなピースをしながら、彼女は下手くそなウインクを画面に向けて飛ばした。
多分だけど、店の評判を下げることが目的の番組なのだろうな。
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