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春臣はその後、雑貨店でマンダリンの精油を見かけ嗅いでみたが、まさに美晴から微かに感じる甘い香りと同じだった。
マンダリンの明るく瑞々しい果実のような、甘すぎない女性らしさというか。とにかく嫌味のない性質だと春臣は思う。
色素の薄い猫っ毛の柔らかそうな髪はいつも綺麗に纏め上げられていて、瞳は日本人には珍しいヘーゼル色。色白できめの細かい肌に、ぽってりとした艶のある唇が女性らしさを際立たせていて、さらにはスタイルも抜群にいい。
そう、美晴は仕事もできて性格も良し、見た目も完璧な、まさに高嶺の花そのものだった。
だが、その完璧さが災いしてか、美晴に関して浮いた話を一度も聞いたことがない。
(まあ、一生俺のプライベートには関わりのない存在だけど)
春臣は隣で肩を並べて歩く美晴をそっと見下ろしながら、そんなことを思っていた。
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