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春臣は女性経験が少ない。これまで付き合ったのは高校時代に一人と、社会人になってから一人。どちらも自然消滅だった。自分でも別れてしまった理由がよく分からない。いつもなんとなく彼女が出来るのに、なんとなく側からいなくなってしまう。
学生時代から「真面目一辺倒の坂木くん」と呼ばれていた。生真面目に見られてしまうのは、ずっと黒縁の眼鏡を愛用しているからだろうか。これといって褒められることはあまり無かったが、いつもひとつだけ言われる褒め言葉がある。それは……
「坂木君って食べ方がすごく綺麗ね。いつも思ってたけど、品行方正のど真ん中って感じ」
箸で品良く豆腐を口に運ぶ春臣を、机に頬杖をつきながら見つめていた美晴がそう呟いた。
春臣はクラスや職場の中に一人くらいはいる、「学級委員タイプ」の見た目、そして性格だった。決して自分で好き好んでそうなっている訳ではないのに、なぜかいつも優等生キャラとして扱われてきた。
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