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(なんでこうなってしまったんだ……)
春臣はキャッチーなラブホの部屋の中央に、どどんと鎮座する真ん丸いベッドを見ながら立ちすくんでいた。ベッドの後ろには大きな鏡。そして怪しげに光る虹色の照明が輝いている。だだっ広い部屋の片隅には見たこともない不思議な拘束具がごく自然に置かれていて、見ているだけでなぜか恐ろしくなり、鞄を抱え込んでしまう。
「あのさ、私ね」
ラブホの部屋に入るまでは、正体不明でふらふらだった美晴だったが、部屋に入って鍵を閉めた途端、急にしゃんとしてしまった。腕時計とイヤリングを外して淡々とガラスの机の上に並べていく様子を、春臣はただただ身体を硬くして見つめることしかできない。
身に着けている装飾品を外し終えると、美晴は立ちすくんだままの春臣に近づいてきて言葉を続けた。
「実は、男の子たちが春臣くんのこと噂してるのを聞いちゃったの」
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