4人が本棚に入れています
本棚に追加
見せられた写真には小学校の頃のお兄ちゃんと友達が映っていた。そしてもう一人、後ろの方に小さく映っていたのは…。
「この人! ボクの学校の用務員さんだ!」
叫んだあと、ボクは写真を見返し、首を傾げた。
確かにそこに映っているのは用務員さんだ。でも、お兄ちゃんが小学生なら、この写真は十年くらい前のものってことになる。なのに用務員さんは今とまったく同じ姿なのだ。
本当のことが知りたくて、ボクはお兄ちゃんに、一緒に学校に来てほしいと訴えた。でもお兄ちゃんは静かに首を振って、ボクに一言『やめておけ』と言った。
その後お兄ちゃんは、小学生の時、学校の子が行方不明になった話をボクにしてくれた。
お兄ちゃんが小学生の時にも、校内で数人が一度に怪我をする事故が起きたんだけど、現場にいた一人の子が、用務員さんの影が足元から離れるのを見たと言い出したんだって。
その子が用務員さんを『影オジサン』と呼んで騒ぎ、噂は学校中に広まった。でも真相を確かめるより先に用務員さんはいなくなってしまい、騒いだその子も程なく行方不明になったそうだ。
「多分、お前の学校にいるのは写真のおっさんと同じ奴だ。だから、絶対そいつに影が離れたのを見たことを言うな。近づくな」
お兄ちゃんに見たこともないような顔でそう言われ、ボクは大きくうなずいた。
それから数日後。上級生のクラスの子が一人、行方不明になったという噂が立ち、その後くらいに学校から用務員さんの姿が消えた。
もしかしたら行方不明になった人は、ボクと同じように、用務員さんの影が勝手に動いて行くのを見たのかな。そして、それを用務員さんに尋ねに行ったりしたのかな。
お兄ちゃんの言うことを聞かず、もし用務員さんの所に足を向けていたら、行方不明になったのはボクだったかもしれない。
これが、ボクの知ってる影オジサンの話の総てなんだけど…キミの学校の用務員さんは大丈夫? 足元から影が離れたりしないよね?
もし、用務員さんの足元の影が勝手に動くのを見ても、そのことを人に言いふらしちゃいけないよ。…行方不明になりたくなかったらね。
影オジサン…完
最初のコメントを投稿しよう!