苗字レベル

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 川上が顔を引きつらせる。見ると池田も同じで、実は俺もそうだった。しかし、田中だけが首を傾げている。 「え、何? どうしたんすか、先輩たち」 「いや、なんで気が付かなかったんだろう……」 「それな」 「まったくだよ」  俺たちは顔を見合わせた。背後では先生が怪訝そうに近づいてきており、それにようやく田中も気がついたのか息を飲む。 「先生いたら最強じゃん……」  どうして気が付かなかったんだろう。  神宮なんて字面、とてつもなく神々しいじゃないか。神に宮なんて。それに、二文字。パッと見た目は柔らかで二階堂や五十嵐のようなゴツさはない。  斉藤、池田、神宮、川上、田中……ほら、上手く紛れ込んでいる。擬人化するなら、菩薩のような姿だろう。  これはもう…… 「こんな近くにいたとはなぁ、レベル100」  池田がぼそりと言った。異論はまったくもってない。  こうして弱小苗字パーティの俺たちは、最強苗字レベル100の登場により急成長を遂げた。これなら、急に異世界へ飛ばされたとしてもなんとかなるはずだ。  まぁ、そんな予定があればの話だが。
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