苗字レベル

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「いや、池田。お前が思い浮かべたワタナベは渡辺だろ。ワタナベってナベの字だけでなかなかのバリエーションがあるからな」  うちのクラスにいるワタナベは渡邉。この「ナベ」の字が異様に多いことはなんとなく知っている。異体字というやつだ。数えただけでも辺、邉、邊……しんにょうの点が一つだったり、とまあとにかく多い。 「あー、それならもういっそのことワタナベパーティを作ればいいよ、そいつらは。ワタナベパーティはまとめてレベル50な」  池田が投げやりに言う。田中も頷いていた。 「それじゃあ、高木もそうですよね」  川上が別の名前を出す。  高木……これもまたレベルはそんなに高そうではない。高い木なのに。 「だって、高の字ははしごと口で分かれますし。なんか、はしごの高いって字、かっこよくないですか?」  高いという字は旧字体がある。ちなみに、崎の字も「立つざき」という旧字体があるから、こいつも含まれそうだ。いや、これらは旧字パーティか。 「だったら、斉藤先輩もじゃないっすか。ほら、サイトウにもいろいろあるし」  田中が気付く。それは俺も丁度考えていたところだ。  すると、池田が腕を組んで鼻を鳴らした。     
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