第二話

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 クリスタルの解錠に求められる知識は、第一言語だけではなく第二言語の知識も含まれる。  第一言語とは、人間と機械間の言語のことであり、広義には、人間が機械に出す指示全て、もしくは機械側から発せられる表示全てと定められている。  例えば、コンピュータの画面に人語が表示されており、その内容に従って選択や操作を行っていく対話型と呼ばれる操作も、広義の第一言語を用いたものだ。  逆に、狭義の第一言語とはかつてプログラミング言語と呼ばれていたものである。基本的に世のコンピュータ関係の従事者は、この狭義の方の第一言語を取得している。  第二言語とは、近年になって見つかった機械間で行われる囁きだ。人類が第二言語を発見できたのはほとんど偶然だといわれている。通常、第一言語取得者でも理解できるものではない。  第二言語は第一言語よりも情報が圧縮されているため、機械間でのやり取りは一瞬で済む。もっとも、人間の体感とコンピュータの体感が同じであればの話だが。 「うちに来たのはネットの情報を見たからだろうけど、広告もろくに出してないから検索結果の上位には来にくいはずなんだけどね。よく見つけたものだよ」 「それは……その、都市にいる解錠業者の人をいくつか当たってみたんですけど、全部断られてしまって。最後に当たったところに、ここならもしかして、と名前を教えてもらったんです。ここなら第一言語だけじゃなくて第二言語も取得しているらしいから、と」 「なるほど、第二言語か。これはあくまでただの雑談なんだが、キミは第二言語と言われてどういうものを想像する?」 「どんな、と言われても……僕は専門家ではないので……」 「感覚的なもので構わないよ。一般論が知りたいだけだから」 「……第二言語は機械の言葉だと思います。機械の囁きだとか、第二言語も第一言語に含まれるとか、色々意見があるのは知っていますけど、よく分からないです」 「機械の言葉か、シンプルでいいね。なら、第三言語は人間の言葉か」  第一、第二の他に人間同士の会話や文字でのコミュニケーションを第三言語とする層もいるのは知っているが、あまり主流の呼び方ではなかったはずだ。 「ボクは街の方ではそういう風に言われているのか……機械の言葉が分かるなんて、そんな大層なものじゃない。ボクは人間の言い分を機械に押し付けているだけさ」
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