第二話

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「少し……時間が掛かる上に、依頼主であるキミにも多少の手間を掛けさせるかもしれない。これだけ複雑な回路を生成したクリスタルなんて、ボクも初めて見た」 「そんなに複雑なんですか?」  専門外の夏生にしてみれば、クリスタル内の回路の複雑さなど一見しただけでは分からない。  透明なキューブの中に生成された赤色の直線たち。突き進み、折り曲がり、幾重にも重なり合って、複雑さよりも美しさの方が強く感じられる。 「複雑を通り越して異様だね。一体どんなデータを閉じ込めたらこんな奇っ怪な回路になるんだ」  母の形見であり、その思いの結晶であるかのように思えていたクリスタルが、その一言で急に不可思議な物体に思えてしまった。
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