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与えてくれる愛しい人
職場で公認の二人だった。年上でさばさばとした彼女は繁勇への愛情表現を公然としていたし、繁勇はそんな彼女を照れながらも全て受け入れていた。彼女は年下の繁勇をとても可愛がり、繁勇も彼女の潔さに幾度も救われ彼女を大切に想ってきた。
しかし彼女はいつからか次第に繁勇を避けるようになった。繁勇は思い当たる節がなく、ただ彼女の避ける意思を受け入れるしかなかった。
「繁勇くん、私、妊娠してるんだ。繁勇くんとの、なんだけど」
彼女のマンションで久し振りのデートだと喜んでいた繁勇は、彼女の言葉にまず驚いた。そしてすぐに喜色を見せた。
「どうしよう、嬉しい! 子供が産まれるんでしょ!?」
繁勇は彼女と子供との幸せな家庭を想像し輝いた笑みを浮かべる。しかし。
「何言ってるの? 私、産む気ないよ?」
彼女は深刻な表情で言った。
「だってあれ、酔っ払った勢いでしょう。それに、私まだ子供育てる気ないし」
彼女と交わったのは一度や二度ではない。だが避妊を行わなかったのはただの一度きりだった。
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