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で、その時、俺は2年生でね。何といったらイイのかな。映画部のようなものに入っていた。
映研ってヤツかな? 今現在のレベルで見れば噴飯ものだがね。おもちゃみたいな機材をいじりながら、撮影の真似事にふけっていたわけさ。
それで卒業祭の出し物に、ちょっとした怪奇映画をつくろうという話になったんだ。フツ―なら、もう少し真面目でマシな企画でも考えるんだろうが、そこが当時レベルってやつでね」
男はカウンターに置きっぱなしになっているグラスから、冷酒をすすった。一口だけ。
「・・・俺の育った町には、ある噂があった。いや、通った小学校と言い直した方がいいか。
さっき言った口裂け女やトイレの花子さん。ああいったモノなら誰でも知ってるよな。
最近ならネット発祥のーー『きさらぎ駅』なんかもそうだ。
詳しくなくても聞いたことくらいは、あるはずだ。言ってみればメジャーだ。メジャーな学校伝説、都市伝説ってやつだ。
ところが、マイナーなヤツもいくらでもあるんだよ。田舎でも郊外でも、そうして本家の都市地域ーーでもな。ほとんどの人間は知らない。耳にも入らないってヤツがね」
「それがーーノリエなのかい?」
知合いの問いかけに、男はかすかにうなずいた。
「ああ、そうだ。○○区の××小学校。・・・知らないだろうな。日没前後から、夜間にそいつは現れる。
なぜ、ノリエというのか。誰も知らない。人の名前なら姓なのか名なのかーー分からない。他に意味があるのか、そういったことはさっぱりなんだ。
噂で伝わってくるのは、男か女かもはっきりしないノリエが、学校の校舎に現れる。屋上に立っていることもあれば、校舎の前に佇んでいることも。もちろん、校舎のなかにも、だ」
「大昔に、怪人赤マントというのを聞いたことがあるよ。ようするにノリエも怪人というわけかい?」
知合いがまぜっかえすと、男はしばらく黙ったらしい。気分を悪くしたというよりも、ちょっと考え込んでいるという印象だったそうだ。
「赤マントね。いいや、怪人ーーそんな代物じゃあない。とにかく、ノリエが出没するのは校舎か、そのすぐ近くに限られている。
そうして・・・」
「そうして、どうなる?」
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