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「走っても走っても、出口にたどりつかない! そんな馬鹿なことが、と思っても本当なんだ。校舎といってもたかが小学校だ。廊下の長さなんてしれている。複雑な箇所なんて、どこにもない。なのに、出口が見つからないんだ。
まるで、ついさっき自分たちが撮ろうとしていた『果てのない階段』そのままだ。あんた・・・信じるか?」
知合いは、何も言えなかったそうだ。まあ、そうだろうな。
「時間にすれば数分だったかもしれない。パニくっていた俺には数時間くらいに感じたが。
デスゲーム・・・って分かるか? ネットやコミック、映画なんかじゃお馴染みだ。ようするに、命を賭けたゲーム。遊戯。
賞品があるとすれば、そいつは自分の生命だ。
しかも、たいてい、デスゲーム状況ってヤツは、否応なくーー唐突に参加させられる。泣こうが、喚こうが・・・。
その時の自分の置かれた状況は、デスゲームそのものだったかもしれん。
命がけの、正真正銘の鬼ごっこ。
陳腐な言い方だが、後ろから鬼がやってくる。ああ、鬼が、な。比喩でも何でもない。
ふつうの子供の遊びなら。つかまっても舌打ちして終わりだ。
だが、こいつは違う。こいつは・・・。
そんなーー鬼ごっこにも終わりが、きた。足がもつれて、ブザマに転んだんだ。痛かったが、それ以上に恐ろしかった。自分が今、置かれているわけのわからない状況。それから、あの、踊り場にいた得体のしれないもの・・・」
「・・・・・・」
「体を投げ出して、ぜいぜい息を切らしている俺の背後に気配があった。山田か加藤か田中か・・・誰かは分からないが、いっしょにここまで逃げ出してきた仲間だと思った。そう思ったら」
男の喉が、
ごきゅっ
と、音をたてたそうだ。もちろん、こいつはすすった酒を飲み込んだ音なんかじゃあない。
「声が聞こえた」
「声?」
「声だ。いやーー何と言ったらいいのか。耳に入ってきたんじゃないかもしれん。説明できないんだ。ガラスを尖った固いモノで、引っ掻くような声が、俺の後ろからかすかに響いた。そうだ。こう言ったんだ。
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