1人が本棚に入れています
本棚に追加
「あーあ。」
帰り道、ランドセルを背負った少女は幾度となくため息を繰り返した。
少年は少女の陰鬱な気を紛らそうと明るい話題を振る。
「佳織ちゃん、席が近くになって良かったね!」
すると少女は、ますます眉間にシワを寄せて声を荒げた。
「翔くんのすぐ後ろなんて、絶対にイヤ!」
その言葉に驚いた少年は、少女の顔を覗き込む。
「佳織ちゃん、僕のこと、嫌いになっちゃったの?」
「嫌いじゃないから、こうなってるの!」
と、ふくれっ面を覗かせて、そのまま駆けていってしまった。
なにを怒っているのか、少年にはさっぱりだった。
少女は楽しそうに話す少年の横顔を想うと
胸が締め付けられるのだった。
<了>
最初のコメントを投稿しよう!