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あれは忘れもしない高校の入学式の日。
俺は天使に出会った。
「………はっ……」
少し長い綺麗な黒髪。丸く大きな瞳。綺麗に透き通った白い肌。薄紅色の唇。
天使。
こう形容する意外に言葉は無かった。
「何だよ須山、腹でもいてぇのか?」
「………」
「すーやーまー」
「…………」
「…駄目だコイツ…」
体育館の中、中学からのツレは可愛い子がいないか躍起になって探している。でも多分、その行為にあまり興味のなかった俺が一番初めに見つけた。
天使、天使、天使、
可愛い天使、超可愛い。
これは運命としか思えない。そう感じる程全身に電撃が走り、俺の脳はビビビと何かを受信したのだ。
天使は広い体育館の中、落ち着きがないのかそわそわしている。右を見て、左を見て、その丸い瞳がキョロキョロ動くのを俺は釘付けになって見ていた。
あぁ天使、可愛い。でも運命を感じてしまったこの天使、どうして、
男の子なんだ……。
「須山ー、お前何さっきから見てんだよ」
中学からのツレ山中は俺の視線の先を見て目を細めた。
そこには天使がいるのだが、どうやら山中には見えていない模様だ。
「ぅわ、何あいつっ」
「は?」
山中の少し上擦った声に俺はイラッとした。俺の天使を蔑むのか?
と思ったがどうやら違うみたいだ。山中は天使の隣にいる男を見て声を上げたらしい。
「チョーイケメンじゃん、ありゃあライバルになるな…」
山中がライバルになる、と言った相手は多分あの男だ。ずっと天使の隣にいてすっげぇ素敵な笑みを浮かべている。
〝王子様〟
その単語が自然と出てきた。
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