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スマホを立て掛けてエレベーターから出ていくYさんの足の映像からそれは始まった。
ドアが閉じると次に3階の倉庫がガラス越しに映る。ダンボールだらけの見慣れた光景だった。
そしていよいよ4階に上がり、ゆっくりとドアが開くのだった。
空っぽである。
Yさんたちが初めてビルに移ってきた時と同じように、何もないテナントの空間。
床からは光回線用のケーブルが飛び出し、天井からも電気の配線がぶら下がっていた。
「あれ?」従業員の一人が画面を指さし震える声で言った。「天井からぶら下がっているケーブルが揺れていませんか?」
風もないのに、それは確かにゆっくりと左右に揺れていた。さらに従業員はこんな一言を発するのだった。
「このケーブルの先なんですけど・・・・・・輪になっていますよ。首を吊る時にそうするみたいに」
Yさんは今もそのビルで営業を続けている。
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