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Yさんは10年間務めた会社を退職し、ネット上に雑貨屋をオープンさせた。それはずっとやりたかった夢を、ようやく実現させた瞬間だった。
学生の頃から無類の旅行好きで、世界中を歩き回り、その都度現地の変わった雑貨を購入しては、ネットで転売してきた。
いつも好評で、たちまち売り切れるのだった。現地で購入した際の数倍の価格設定でも何も問題なかった。必要なのはバイヤーのセンス。
Yさんはこれをもっと本格的にやってみたかったのである。「価値は上がるのを待つのではなく、自分で上げるもの」常にそう感じていたという。
当初は自宅の使われなくなった部屋を改造して倉庫に利用していたが、順調に売上を伸ばすにつれ、徐々に手狭に感じていくのだった。従業員も数人雇えるようになり、いよいよ本格的なオフィスの必要性を感じていた。
そして「どうせならオフィスと倉庫だけじゃなく、実店舗を構えてもいいかな」と思うようになっていくのだった。
Yさんは暇を見つけてはテナント探しを続けてきた。歩き回るのは嫌いではない。それが功を奏し、ようやく希望に沿う物件を発見したのだった。いや期待以上だった。
築年数は経っているが4階建てのレトロな作りのビルで、1階から3階まで空きテナントである。しかも大通りに面している。
「1階を実店舗にして、2階をオフィス、3階を倉庫にしたら良いんじゃないかなって思ったんです」とYさんは語る。
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