4階

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 経営は順調だった。  ネットはもちろんのこと、実店舗も女性を中心に噂が広まり予想外に好調で、業績は右肩上がり。  何よりも嬉しいのは、商品の買い出しのために世界中を飛び回れることである。Yさんは学生時代に戻った気がしていた。これこそが自分の理想とするライフスタイルだったのだ。  ただし一つだけ懸念材料があった。当然のごとくそれは4階の存在である。得体の知れない空間を常に頭上に意識しながら仕事をしなければいけないのは、軽い負担になっていた。  そして従業員のこんな一言から恐怖は伝播していくのだった。 「3階の倉庫に商品を取りに行った時なんですけど、ダンボールの中を覗き込んで商品を探している時に、なんとなく違和感を感じて振り向いたら、3階に止まっているはずのエレベーターが4階に上がっていたんです。僕以外誰も乗っていなかったのに」  これをきっかけに同じような経験したと告白する従業員が続出してしまうのだった。 「古いビルだから、エレベーターも旧式なんだよ。きっと故障してんだろ」とYさんは躍起になって揉み消した。「実は自分も似たような経験をしたんだ」と打ち明けられるわけもなく、噂を広めた従業員に口頭で注意して幕引きを図ったが、一度広まった噂を消すには至らずに終わるのだった。
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