第一章 美也子

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 満里奈の悲痛な叫び声が響いた。フォークで心臓を貫かれた明菜の体は、びくっ、びくっと一度二度痙攣し、そしてその後、完全に動きを止めた。美也子はその時、悲鳴を上げることすら出来なかった。両手で口を覆い、目の前で起きたことを受け入れるのに必死だった。いや、それは到底受け入れられるものではなかった。明菜の体の上に屈みこんでいた一樹が立ち上がり、静かに、くるりと美也子の方を振り返り。その非情極まりない氷のような目を見た瞬間、美也子はふっと意識が遠くなり。ぱたりと床の上に倒れこみ、そのまま意識を失った。
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