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しばらくの間、沈黙が続いていたが、それを破ったのは、トモさんだった。 手の甲で目をこすっている。
「ビールでも飲もうか。」
「いいけど、俺買われへんから、」
僕がそう言い終わる前に、トモさんは立ち上がり、カフェのラインの中に消えて行った。 二、三分程で戻って来た彼の手には、大きな紙コップが二つある。
「悪いけど、話聞いてもらえるかな?」
「俺でよければ。」
「十日位前に、彼女から手紙が届いたんだ、、、九か月も待てないだってさ。 新しい彼氏ができたから、もう手紙も電話も欲しくないって。 まだ三か月しか経ってないのにな。」
「そうなんですか。」としか言えなかった。
「考え方も生き方も違うってさ、、、」そう言って、ビールを飲み干した彼の肩は、また小刻みに震えている。
「悪いな、付き合わせて、大丈夫だから、もう行っていいよ。」
「気にせんでええですよ、、、ビール、もう一つ買ってくれますか?」と十ドル札を渡し、彼の背中を押して、カフェの中に入る。
彼は、「歌うか。」とボソっと言うと、ジュークボックスにコインを落として、またビールを二つ買った。
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