趣味『食べ歩き』

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趣味『食べ歩き』

 休日に食べ歩きをするのが趣味だ。  今日もグルメ雑誌の紹介文に煽られて、目当ての店に足を向けた。でも、探せど探せど目的の店が見つからない。  雑誌で紹介されるような店ならば、行列ができていてもおかしくないのに、近辺は味気のないビルが立ち並ぶばかりで、店どころか客らしき人影さえも見当たらない。  隠れ家的な店で、予約してないと入れない、とかなんだろうか。でも雑誌にはそんなことは書かれていなかった。  せっかくここまで来たんだし、腹もかなり減っている。どうしても店を見つけたい。  そんな気持ちでビル街をうろつく俺の鼻に、ふと、どこからともなく食欲を掻き立てる匂いが漂ってきた。  和食? 洋食? 中華? 何かは判らないけれど、嗅いだだけで美味いと感じられる匂いが漂ってくる。  雑誌の店は間違いなく近くにある。でも、どこだ?  匂いを道標に進んで行くと、やがて辿り着いたビルの入り口から強烈に美味そうな匂いが漂ってきた。  こんな所にあったのか。これじゃ迷う筈だ。でもようやく見つけた。さあ食うぞ!  意気揚々と店に入りかけたその瞬間、タイミング悪くスマホから着信音が響いた。  出鼻を挫かれた気持ちになりながら出ると、今日は都合で来られなかったが、予定が合えば一緒に食べ歩きをする仲間の、怪訝そうな声が耳に流れ込んだ。
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