私観

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昼間のワイドショーの一言なのに、それはネットニュースで大きく取り上げられていた。 どうやら、少子高齢化の問題を取り上げた話題だったようだ。 そもそも子供がいないのは若者が結婚しないからで、政府が積極的に介入するべきだと述べたおじさまコメンテーターに、アシスタントの女子アナが放った一言。 「わざわざ独身者の心配をしてくださってありがとうございます。ただ私として結婚の仕方よりどうしたら不倫や離婚をしてしまうのかが知りたいところですね」 そのコメンテーターが番組の冒頭で、不倫報道のあったタレントを庇うような発言をしていたのもあってか、放送事故とも取れる彼女の発言は痛快そのものだった。 それも数ヶ月前のことだ。 ちなみに相手はそれなりに容姿の整った野球選手で、ファンの女性たちはかなり大変だったそうで。 もちろん彼女は結婚を否定した発言をしたわけではないし、全体的に祝福ムードなので、私1人がどこかでモヤモヤした感情を持て余しているのかもしれない。 人は中身が大事だというのはあくまでも綺麗事だ。 それを入れる器が美しいからこそ、着飾っているからこそ。 外見で興味を抱かれないことには、その芽は出ないのだ。 休憩所の鏡を見る。 細い金縁の眼鏡に、薄い化粧。 髪は黒のゴムでひとつに縛っただけ。 就活用に買った白のブラウスとスカート。 寒くて羽織ったのは、ひざ掛けにもなるという緑のポンチョ。 足元は黒の靴下と白のスニーカー。 普段の業務的にほとんど人前に出ることはないので、余計に自分の格好には無頓着になる。 特別恋愛や結婚をしたいと思うことはないし、そんな余裕はない。 けれど、こう現実を見てしまうと、もう少し気にするべきなのか不安になってくる。 「ほら、そんなことより仕事でしょ」 カフェオレが入っていた紙コップをゴミ箱に投げ入れて、早足で職場に戻る。 「ナゴちゃんのオニー」
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