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「この子がそんな……子どもができるようなことをしたっていうんですか!」 「していないなら、していないで結構です。妊娠の可能性はありますか?」 「あるわけないでしょう!」 「僕はお子さんに聞いています」  中井が勘弁してくれ、という表情でこちらに助けを求めてきた。まったく出ていきたい場面ではなかったが、仕方なく安全地帯から診察室へと向かった。こちらに気づいた植野が、訝しげに見返してくる。その視線を受け流し、まずは患者に声をかけた。 「痛いよね、ゆっくり呼吸は出来るかな」 「こっちの先生に変えてください!こんな失礼な人に娘は診てほしくありません!」 「お母さん、内科救急担当の天野です。お話は後でうかがいますので、まずはお嬢さんの検査を優先してもいいですか?」 「わかりましたが、この先生はもう嫌です」 「まずは検査をしましょう……尿検査をする必要があるの、トイレに行けそうかな?」  ストレッチャーの上で固まっていた患者を車椅子に移乗させる。中井が今度こそ母親を待合室へ連れ出した。 「ごめんね、急に質問されたからびっくりしたね」     
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