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 時刻は2時になろうとしていた。待合室の母親は、中井のサポートもあって大分落ち着きを取り戻していた。植野の態度を詫び、妊娠反応検査の同意を得て、再び診察室に戻る。  そこには半眼状態の中井がいた。 「陽性(ポジティブ)だって」  最悪の結果に、私も声もなくのけ反った。植野だけが「じゃあ、婦人科の先生呼びますね」と淡々と現実に対処している。 「……あのお母さん、手がつけられなくなったら呼んで」  せめてもの手伝いを申し出て、戦線離脱を宣言した。中井にとっては、長い夜になりそうだった。
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