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「そのつらかった気持ちを、三谷さんはどうやってやり過ごしたんですか?」  ともすれば、手元に落ちがちの視線を上げ、私は応じる。 「物に当たったりしてしまいます。そんな、お皿を壊したり、壁に穴を開けたりまではしませんけど、タオルとかクッションを壁に投げたりとか」 「いいんじゃないですか。三谷さんが怪我しないなら、いい方法だと思います。それですっきりしますか?」 「多少は。でも、またイライラが強くなってくることがあります」 苦笑混じりの彼女につられるように、こちらの言葉尻にも苦笑が混じる。 「何がイライラのきっかけになりますか?」 「そうですね……やっぱり母親のことが多いです。昔から母のことは苦手というか嫌いというか……嫌いって言っても、構わないんですよね?」 「もちろん、構いませんよ。『嫌い』って言うのは難しい?」 「いえ……はい、そうですね。何だか、そんなことは言ってはいけないような気がしてしまいます」 節のたった指を撫でる仕草は、少し落ち着かなくなっているからだろうか。促すように首を傾げ、続きを待つ。 「私、『いい子』でいたいんです、もうこんな歳なのに」     
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