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 わずかな可能性に咄嗟に縋った私を、信じられないものを見るような目で見つめ返してきた。夫の視線に少なからず傷つく。そして、彼にこんな顔をさせた自分にも腹が立った。 「なあ……子ども作るって、こんな大変なことか?」 「…………」 「こんなタイミングでして、楽しいか?」 「………………」 「何でこんな不愉快な気持ちにならないといけないんだよ」 「……………………」 「何とか言えよ!!」  声を荒げる夫を前に、何ひとつまともな返事ができなかった。しばらく待っても何も答えられない私を置いて、大きなため息を吐き捨てると、彼は自室に引き籠った。  乱暴に閉じられたドアの音をきっかけに、今度は私の中で何かが爆発した。  寝室に飛び込むと、枕元に置いていた基礎体温表を引っつかんだ。数ヶ月分をそのまま力任せに引き裂くと、ごみ箱に叩き込んだ。派手な音を聞きつけて、夫が寝室に駆け込んでくる。 「何してるの……」 「こんなもんがあるから!」  ごみ箱から溢れる紙束を踏みつけ、あり余った苛立ちが抑えきれず、ごみ箱も蹴り飛ばす。 「訳のわからない気持ちになるんじゃない!」  自分でも、常軌を逸しているのはわかっていた。たった1年ほどの間に、「子どもが欲しい」という私の思いは醜く変性してしまっていた。     
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