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毎月の生理は、答え合わせのように思えた。タイミングを間違えたから、記録をつけ損ねたから、体調管理ができなかったから、『貴女は今月も子供を授かれませんでした』――そう言われているような気がしていた。
限られた卵が体の中で失われるイメージを、幾度も思い浮かべた。果たして自分には、あとどれだけの猶予が残されているのだろう。そう考えるだけで、ベッドの中で身悶えするほど苦しかった。
期待に応えられない自分が惨めに思えた。決して多くを望んだつもりはなかった。
夫と自分に少しずつ似た子どもが、そばにいれば幸せだろうと思った、ただそれだけなのに。
行き場を失った感情は涙となって私の顔を汚し、やがて疲れ果て、ベッドの上にへたり込んだ。
「千鶴」
気がつくと、夫がすぐ傍にいた。もう一度私の名前を呼ぶと、背中からゆっくり抱きしめてくれた。アルコールで温まった肌の匂いが切なくて、よりいっそう涙が出た。
「……俺は、子どもなんかいなくてもいいと思ってるよ」
表情はうかがえなかったが、いつになく真剣な口調で彼は私の耳元に囁いた。
「出来れば、それはそれでいいなって思ってる。でも、俺は千鶴さえいればいいのに、まだ存在もしない子どものことで、こんな風になるのは嫌だ」
ぐっと強く抱きしめられて、胸が詰まる。
「俺、千鶴と2人で生きていければと思ってるよ」
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