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診察室に長居したせいもあって、職員食堂は閑散としていた。それぞれ定食を手に、佐野と私は会話のしやすい4人掛けのテーブルに席をとった。 「今日はえらく『怒り』が動くみたい」  トレーの前で手を合わせた佐野に、今の心の内を伝える。 「そんなに患者さんが大変でした?」 「いや、患者さんから持ち込まれたというよりも……私の中にもともと怒りがある感じ」 「生理前とか?」 「それもあるかもね。それと、母親からものすごく腹立たしい電話がかかってきた」  それはしんどいですねー、と佐野が相槌を打ったところで、「一緒にいいですか?」と右手から声がかかった。そこには消化器内科の白瀬が立っていて、私は勿論、と手前の席を譲った。細身な彼女のお腹は、術衣の上からでもわかるほど、ふっくらと膨らんでいた。 「だいぶお腹も大きくなってきたね……もう何ヶ月になるんだっけ」 「先週から5か月に入りました。一応、安定期になるみたいです」  白瀬は今年7年目になる医師で、私の2つ下になる。初期研修修了と同時に結婚したので、既婚者としては彼女の方が先輩だ。 「まだ悪阻ですか?」     
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