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 うどんの乗ったトレーを覗き込んだ佐野が気遣うと、これでも大分マシになったんですよ、と白瀬が困ったように笑った。 「最初は本当につらくて……患者さんで吐き気の人はたくさん診てきましたけど、私、あんまりわかってあげられてなかったなって、申し訳なくなりました」 「ずっと医局でイチゴばっかり食べてたもんね」 「食堂の匂いが気持ち悪くて、入れなかったんです。お出汁の匂いも駄目だったので……今はちゃんと美味しそうって思えるんですよ」  その言葉通り、白瀬はいい音を立ててうどんを啜ってみせた。確かに、一時期に比べて体調は良くなってきているようだ。そうなると、この機会に彼女にいろいろ聞いてみたいことが出てきた。 「シラセちゃん、この後仕事詰まってない?」 「午前の検査は終わったんで、しばらくは大丈夫です」  後学のために聞かせてほしい、と切り出すと、彼女は何でも聞いてくださいと快く請け合ってくれた。 「仕事、しんどくない?」 「確かに、悪阻の時は困りましたけど……かえって仕事してる最中の方が、気にしなくて済みました。これからもっとお腹が大きくなってきたら、また違うのかもしれません」 「妊婦健診は?仕事休んでるの?」     
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