2.

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発情期を迎えたのは華道の稽古の最中。 なんか怠いな、熱でもあるのだろうか、火照る身体で花を活けているとΩを除いた生徒たちが何だかざわめいていた。 花に不備でもあったのだろうか、そう思って話しかけようとしたところを祖母に呼び出され、定例会に使われる部屋に連れ出された。 「ようやく発情期を迎えましたね。」 Ωであるという検査結果を持って帰った時よりも嬉しそうに祖母が笑って僕を抱き締める。 家ではΩであることが喜ばれ、自分は認められている。それがすごく嬉しくて、学校でのことなんていつも家に帰れば忘れていた。 祖母が喜んでくれた、祖母が喜ぶということは母も喜ぶ、その時はそんな考えしかなかった。 これから起こることなんて全く考えていなかったし、どうして僕の家がΩ至上主義なのかも知らなかった。 「いいですか、あざみ。これから行われることは、家のためなのです。あなたのためなのです。」 腕の中から解放されて部屋に取り残されるとぱたんと障子が閉められた。それから、と障子が開いた時、ぞろぞろと中に入ってきたのはテレビや雑誌で見たことのある顔の大人たち。ぎらついた目で僕を見る。 怖いと思った。何が始まるんだろう、逃げなきゃ、そう思うのに、力が抜けてその場に腰が砕けて座りこむ。 身体が熱い、頭がとろとろする。 「初めて? 大丈夫、僕たちがちゃんと教えてあげるから。」 耳に入る大人の声が何だか遠くに聞こえる。力強い腕が僕を掴んであらゆる場所から触られる。 気色悪いと気持ち悪いと感じるのにどこかそれは気持ちよくて、自分の声とは思えない声が漏れる。 やめて、やめないで、壊れる、壊して、 相反する気持ちが頭を巡る。 白いものが飛び交っては身体にかかり、中に放たれ、口の中にも注ぎ込まれる。 最初は拒絶したそれもすぐに受け入れ、大人たちが僕を褒める。 「そうそう、上手上手。」 「じゃあ、次はこうしてみよっか。」 様々なことをされ、させられた。 怒ることなく、みんな僕に手取り足取り教えては、僕を撫でる。 悦んでいるのは目に見えて分かった。 これでいいのだと僕の中でまとまった。
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