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すっと障子が開かれ、裾に鮮やかな花々が描かれた黒の着物を纏った中世的な顔立ちの少年が顔を覗かせる。
裏辻流華道次期家元の裏辻 あざみ。
今年18を迎える17歳、高校三年。
集まった各界の上層部のαを前にしてぴんと伸ばした正座の姿勢を崩し、つっと前に指を立て丁寧に礼をすると声が発せられる。
「今日もお集まりいただきありがとうございます。」
その声はまだ声変わりをしたばかりか、声変わりをしてないか、十二畳の部屋に高く凛と響いた。
下げた顔が上げられて前に流れた艶々しい漆黒の髪がさらりと動く。
髪の隙間から覗く円く猫目がちの瞳。すっと通った鼻筋にぷっくりと柔らかい紅を塗ったように色付いた唇。
白肌が発情期のせいか桃色に染まった頬を際立たせる。
「さて、始めましょうか。」
にこりと微笑み立ち上がり部屋の中に入れば障子を閉める。
ぱたんと閉められた障子。
密閉された空間。
Ωであるあざみの匂いがそこに充満する。
αにとっては家に入ってきた瞬間から感じていた香り。それが一層濃くなって、αの欲望が一層強くなる。
行儀よく座っていたαたちがそわそわし始め、まだかまだかと目をぎらつかせる。
餌を前にした動物と何ら変わらない。
Ωの前では地位あるαも獣同様。
あぁ、滑稽。
「そんな、焦らなくても…皆さんが満足するまでこの定例会は終わりませんから。」
にんまりと妖艶な笑みを浮かべあざみが笑う。
帯留めに細く繊細な指をかけするりとそれを解けば始まりの合図。
さぁさぁ、今夜も僕を楽しませてくださいませ、悦ばせてくださいませ。
醒めない夜を明けない朝を僕に見せてください。
抑制剤を使っていないこの火照った身体を抑えてください。
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