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3.
一週間で変わるのは勉強範囲だけじゃない。
テスト週間にも近づいていて嫌になる。
テストが好きでも嫌いでもないけれど、点数を取ったら取ったでΩのくせに、取らなかったら取らなかったでやっぱりΩだから、っていちいちα、Ωにとらわれすぎてて嫌になる。
一番そんなことに捕らわれているのは自分なのかもしれないけれど、波風立てないためには捕らわれていた方がいい。
「って、お前なんでまた此処来てんだよ。」
稽古を始めようと水の張った花器を持ち稽古部屋に足を踏み入れるとそこに紫苑がいた。
「生徒なんだし、居てもおかしくないだろ?」
「いや、そうだけど、テスト前だろ?」
昇級試験のためには年に何回と級ごとに稽古の回数が決められていて、その回数さえこなせればいいのだから、毎月毎週来る必要性なんてどこにもない。そのため、学生の生徒はテスト週間やその前には稽古に来ない人が多い。
現に今日も自分の高校の生徒は紫苑以外誰もいない。
なのに、紫苑はいつも稽古に来る。
僕が先生として出始めた高校一年の頃から稽古に出る時はいつもと言ってもいい。
紫苑は僕が発情期の時には来ないんだから数合わせだよ、だとかいうけど僕の発情期なんて三ヶ月に一回一週間なんだからそんなに回数が足りなくなるものでもない。
来るなとはいわないけれど、でも、何もいつも来なくてもいいじゃないか。
「今更じゃね?」
「だけど、さ…今回、テスト範囲割とあっただろ?」
今日、紫苑から受け取ったノートを午後の授業受けながらぺらぺらと捲っていた。割と進んでいた範囲。これが次のテスト範囲かとおののいたのは言うまでもない。
高校三年がいかに受験前かを思い知らされた瞬間だったかもしれない。そういえば三年になったんだっけと実感もした。
「で?関係なくね?終わったらお前と勉強するつもりだし。てか、付き合え。」
「えー、また僕とすんのかよ。」
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