10.

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自然と醒めた熱。 開いた瞳で周りを見渡しても紫苑はいない。 コレが当たり前。 アレが異常。 そう思い込まなきゃいけない。 でも、何年と続いた習慣が簡単に忘れられるわけもなく心のどこかで紫苑を望んでる。 重たい身体を持ち上げて開く扉。 お風呂場へ続く長い廊下。 お湯の貯まっていないお風呂。 なんだか笑えてきた。 甘え過ぎていた自分に。 アレが当たり前だったんだ。何年間も。 風呂を貯めるボタンを押して浴槽に湯が貯まるのをじっと眺める。こぽこぽと音を出して湯が貯まってく。まるで時間が止まるかのようにゆっくりと。 お風呂が沸きました。 そんな機械の声にハッとした。
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