喜悲劇の傀儡 手記

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喜悲劇の傀儡 手記

 嗚呼まさに不条理!オントロギーを喪いし人の生、まさに不条理!無論、決して櫛風沐雨の苦労気苦労の無かったわけでは無い、のうのうと飄逸に生きゆくふりをした悩める人間であることには違いない。だが独擅場を欲し人を欺くが如き人の生、冥加無し。虚仮歌を遺して逝くこともままならない。実に、喜劇。可笑しいでしょう、可笑しいでしょう、お笑い話になり得ましょう。  人生を楽しいものと見る者は実に仕合わせな人だ、と善くわたしは言ってみたが、如何やらそうでもないらしいと悟った。条理に正しく在る者がそう仕合わせであるのであって、善く見てみればわたしの"人の生"も実に楽しい喜劇には相違無いじゃあないか。幼子の折に根っからの悪人の様な面構えをして見せて、そこに人間らしい優等生の皮を被せて小学校に通ってみたり、そこに更に堕落の落伍者の皮を被せて道化になったりした。可笑しい、可笑しい。ちぐはぐの生き方だ。其れでいて中身は未だ根っからの悪人面で、落伍のために哀しみ苦しむ崩壊者。まさに喜悲劇!だからこそオントロギーを喪ったとも言えよう、外見のうちに道化をして了えば内側は悩むるのに、辿り着いた結論は生きる意味の喪失。  わたしは金も学も大したことはありはしない、容姿が良ければ其れで好いのだが、果たして其れもない。生きるのにも不器用、更には嫉妬心許りは一人前。こんなに生きづらい人間が他に在ろうか?言い訳だとはいえ、ああ、面倒だ、無気力だ、と投げやりにもなろう。偶々わたしがその自らの本質を領解したのが幼子の折であったと云うだけで、いつ領解しても同じことだ。  わたしは一方で知られぬ己惚れを抱えている。野望を持っている。誰よりも勝れた部分があると云う自負が在る。其れをわたしはわるい自負だと領解している。自己矛盾を起こさせわたしを生かす悪魔だと軽蔑してもいる。双方のわたしは互いに軽蔑し、忌み嫌うが、生憎我が身体は唯の一つ哉、お道化が始まり人は笑う。わたしはわたしに依って人を笑わすことを好む。そこで奇妙奇天烈にも歪んだ歯車は噛み合って回り回っているのだ。
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