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冬、微熱。
「おはよう。高田さん」
ウエットティッシュでビジネスホンの受話器を拭いていると、出勤してきた室長に声を掛けられた。私は手を止め顔を上げる。今日もふわりと優しい笑顔だ。
「おはようございます、三宅室長」
室長は少し顔を傾けて私の顔を見た。
「あれ、口紅変えた?」
「分かりますか? ちょっと赤を強めにしてみたんです。新色なんですよ」
「そうか、似合ってるよ。秋っぽくて良いね」
「ありがとうございます」
私が笑顔を返すと室長もにっこりと笑顔を見せ、自分の席に戻っていった。
(今日も素敵な笑顔だったわ。癒やされるぅぅ)
三宅亮室長、三十八歳、独身。天然パーマっぽいふわふわとした茶髪に、細い糸目がチャームポイントの癒やし系。
――私の好きな人。
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