うらめしや

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 渾身のセリフを遮られたにもかかわらず飯塚はニコニコとして明るく話した。すると、三角頭巾がぺろんと額に垂れて逆さまになった。簡単に言うと、額に白い逆三角形が張り付いている状態だ。彼は特に焦る様子もなく、まるでエレベーターガールのように、鼻にかかった声で 「上に参りま~す」  と言って、右手で撫で付けるように三角頭巾を上向きに修正すると 「最近新調したんですけど、なかなか馴染まなくて困りますね」  と言って笑って、少し恥ずかしそうに目線を逸らすと   「ところで、幽霊だとわかってもらえてはいたんです?」  と続けた。飯塚の一方的なトークに戸惑った秋山は渋々答える。 「それは、まあ、その、いかにもと言った格好だしな」  その答えを聞いた飯塚はさらに上機嫌になり、上ずった声で 「いやあ~、それは良かった。ここまでして幽霊ってわかってもらえなかったらどうしようかと思いましたよおっ」  と素直に喜んだ。 「ああ、私はこんな馬鹿話をするために来たんじゃないんだ、本題に入ってもいいかね」  秋山は、再び不快な音をたてながら耳元に飛来した蚊を叩き潰しながら言った。 「あは、そうですねえ、すいません。何の御用か伺いたいところですが、ここではお暑いでしょう。どうか上がっていってくださいな」  飯塚はそう言って青白い手をおいでおいでをするように動かす。  半ば強引な誘いだが、この玄関先で耐え難い暑さに苦しんでいたのは事実だったので、彼の言う通り中で話すことにした。     
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