nasty love  

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nasty love  

 世界がこうなってしまってから、三ヶ月が経った。生きている人間は、俺以外にいるんだろうか。そんなことを考えながら、外の様子を見るのもすっかり日課になってしまった。外の空気はじっとりと重く、暑い。最初のうちは、こうして外を眺めながらマルボロを吸っていたのだが、ずいぶん前にたばこは尽きてしまった。踏み台の代りにしている風呂椅子に上がって道路を見下ろす。辺りにはいつも通り、『人間だったもの』が徘徊している。不意に向かいにあるコンビニエンスストアから青年が駆け出してきた。彼はまだ人間のようだ。しかし、すぐに奴らの餌食になり、その中に紛れていく。こうなってしまえば彼も奴らの仲間入り。もう何度も見た絶望の景色だ。恐らく俺たちのように生きている人間は存在する。けれども迂闊に外に出ればあの青年のようになってしまうのが関の山だ。そんな中、誰かが助けに来るはずなどない。行政や警察はどうなっているんだろう。電気はもう来ていないようで、電話なんかも使えない。いよいよ俺たち二人も終わりなのか。  いや、二人という言い方も、間違っているのかもしれないが。       
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