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先程、母である女王の前とはあまりの変わりよう。
決して彼は物静かな淑やかな姫ではなかった。
周りの召し使いが男を外へと連れていき入れ替わりに長身の男が入ってくる。
深緑の混じる黒髪の青年。黒い燕尾服を着こなし颯爽と歩き、姫の傍らへ。
「お暇を頂き、感謝致します姫。このアレク、本日から再び姫の執事として仕えさせて頂く事をお許し下さい…」
跪づき恭しく姫の手を取り、甲へと口づける。血のように紅い切れ長の瞳が真っ直ぐ向けられる。
この男も負けず劣らず異様に整った顔立ちをしている。
「気色悪い…離せ。…しかしアレク、ようやく帰ったか…使えない奴ばかりでストレスで吐きそうだ。何か作れ。腹が減った」
口づけられた手を振り払いつつも姫の瞳には安堵の色が宿る。
アレクという名のこの男を信頼しているようだ。
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